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『フェイトとなのはのDay by Day』は‥

2008年01月14日
 『フェイトとなのはのDay by Day』第三回のラストです。(明日アップするつもりでしたけど、夜遅くなりそうなので‥)
お読み下さった皆さま、ありがとうございます。

 現在、このシリーズは三本アップしていますが、
出来るだけ、StrikerSの時系列に沿った形で書く予定です。
現在発表しているシリーズは以下の様に対応させているつもりです。

第一回 発端    StrikerS 一話以前
第二回 パジャマ  StrikerS 三話と四話の間
第三回 デート    StrikerS 六話と七話の間

 ただ、なのはのシリーズって、
公式設定がアニメ、マンガ、サウンドステージと多岐に渡っていまして(あ、秀逸な小説(未だに読むと泣けてしまいます)もありましたね)、粗忽な私は、設定されている時間(季節とか)を間違う可能性もかなり高いです。
 もし間違いに気がつかれた方がいらっしゃいましたら、こっそり教えて下さい。あ、いえ、こっそりじゃなくても結構です。宜しくお願いいたします。

 それでは、『フェイトとなのはのDay by Day』第三回の四です。

P.S.
そうそう、このシリーズの中の用語解説は私の身勝手な設定ですので資料的価値はいっさいありません。‥って、改めて言明しなくても大丈夫ですよね。
『フェイトとなのはのDay by Day ―デート― ★転★』 に戻る

『フェイトとなのはのDay by Day ―デート― ★結★』

 私が悩んでいる‥というか、困惑しているのに気付いていたんだね。
といっても、多分なのはは気がついていると思っていた。(自分が関連した)恋愛絡みでさえなければ、人の心の揺らぎをとても繊細に読み取ることが出来る子だから。
 でも、私の今の悩みは余りにもくだらないから、出来ればなのはには気付かれずに済ませたかったけど。

「なのはは‥」
「うん?」
「さっきのはやての念話を聞いていないの?」
 なのはは一瞬置いて何かに気がついたように目を瞠り、次に赤くなって頭を掻きつつ、笑い出し、
「にゃ‥にゃはははは。教導中は念話をシャットアウトしてたんだっけ。ごめん、ごめん。ちょっと待ってね」
と答えると、耳を澄ましているような姿勢をとった。
「‥うわ、はやてちゃんの魔導花押‥部隊長命令だったの!?」
「ま、まあ‥」
「で、内容は‥‥。あはっ、これに花押を署したのか‥念のいった悪ふざけだねぇ。さすがははやてちゃん♪」
「またそれを真に受ける素直な人も多くてねー。しかもグリフィスに託してこんなモノまで‥」
 私は溜息混じりにそう答え、はやてから贈られたデート用グッズのセットを見せた。
 なのはは笑転げながらその内容を確認すると、悪戯っぽい表情を私に向けた。
「フェイトちゃん、みんなに励まされたんでしょ?」
「うん‥それに、手当たり次第にデートの相手をでっち上げるし‥悪気が無いのは分かるんだけど、ちょっと脱力かなあ」

「あはは‥でもちょっとみんなの気持ちも分かる気がする。フェイトちゃんは素敵だもん。親の‥じゃない、親友の欲目を差し引いても、とっても魅力的だしね♪」

「なのはっ!?」
 なのはが素敵って‥私の事、魅力的って言ってくれた。
「だからそのフェイトちゃんがデートするって聞くと、誰でも気になるんだよ。私もちょっと気になっちゃうし」
「な、なのは、それって‥」
「まあ、そういった効果が十分に期待できるからこそ、はやてちゃんも悪ふざけに走ったんだろうけどね」
 なのはが私の事を気にしてくれた。それも私がデートするって聞いて。
 ‥何! それ何! 私、多少は脈ありって思っていていいのっ。
 妄想に基づく期待に胸を膨らませた私が密かに感激に浸っていると、なのはが無邪気な微笑を浮かべて私に問いかけた。
「でも誰とデートなの? シグナムさん?」
 ちょっ‥まっ‥違うっ!
「ち、違うのっ! デートそのものがはやての捏造で‥私は(なのは以外と)デートなんかしないからっ。本当だよっ」
「いや、そんなに必死に否定しなくてもいいと思うけど。ほら落ち着いて、ねっ?」
私の剣幕に気圧されたなのはは、やや後退りしながらも私を宥めようとした。

 なのはの宥めで漸くクールダウンした私に、なのはが自分の理解した状況を要約して話してくれた。
「するとフェイトちゃんは、デートの予定も無いのに、励まされたり、相手を詮索されたりで脱力してると‥」
「うん。概ね、そんなところかな。‥下らない悩みだよね」
 落ち着いて考えると、こんな事でいきり立ったり、脱力したりした自分が妙に気恥ずかしい。やはり二週間ぶりになのはに会える事で浮れてしまって、情緒不安定だったのかもしれない。
 なのはと一緒にいる事の出来る今なら、さっきまでのドタバタなんて(なのは以外とデートすると誤解される事以外は)本当に大した事じゃないように思えるから。
 そこまで考えてやっと解った。私は‥、

なのは以外の人とデートするって、みんなに思われるのがイヤだったんだ。

他の人とデートしたって噂が、なのはの耳に入るのがイヤだったんだ。

デートの相手が、なのはじゃないのがイヤだったんだ。

 我ながら情けない理由だと思わずにはいられない。自己嫌悪で俯いてしまった私の背中を、私が騒ぎで脱力してると勘違いしているなのはが優しくさすってくれる。
「下らないとは思わないけど‥あ‥」
「どうしたの?」
「フェイトちゃんは、今日はもうお仕事無いんだよね?」
「うん‥部屋に帰って残り香を堪能‥じゃない休もうかなって」
「うーん‥それは出張疲れより、この件による脱力が原因だよね。じゃあ‥ちょっと待って」
「う、うん?」

 なのはは私をブラインド・リスナー(他の念話参加者からは感知できない聞き取り専用の参加者)に設定して念話を始めた。その念話の相手は‥。
『はやてちゃん、今いい?』
『お、なのはちゃん。大丈夫やよ。でも隊舎にいる時に、なのはちゃんから念話って珍しな。なんか急用なん?』(なのはは隊舎内にいる場合は、よほどの急用でない限り念話より直接出向いて話す方を好む)
『急用ってほどじゃないけど‥さっきのフェイトちゃんのデートの件についてね‥』
『お、なのはちゃんも、なんや気になるんか?』
『というか、追加で部隊長命令相当の念話をお願いしたいなあって』
『?』

『えーと、
「先ほどのフェイト執務官のデートの相手は高町なのは戦技教導官と判明。よって高町教導官の行動に関しても、フェイト執務官と同様に決して邪魔をしてはいけない」
って♪』

『ああ了解や。報告ありがとな‥って、なんやてーっ!
『だーかーら♪、フェイトちゃんのデートの相手は私だから、私も邪魔されない権利あるよね』
ちょ、ちょお待って!? いつの間にそんな話に
『宜しくね、はやてちゃん♪』

「な、なのは‥その、それって‥」
 なのはは凄く嬉しそうに笑いながら、私に振り向いた。
私の大切なフェイトちゃんを苛めたはやてちゃんに、ちょっと仕返し♪」
 『私の(所有格! 所有格だよっ!)大切なフェイト』って‥ああ今死んでも、我が人生に一片の悔い無しっ! ‥いや、まだ悔いがあったっ!
「デ、デ、デートって、なのはが私と‥」
「うん♪ そうすればもう、デートの相手を云々される事はないでしょ?」
「でも、その‥」
「フェイトちゃん、私とデートはいや? あ、疲れてるから部屋で休んでいるほうがいいのかな?」
 なのはが寂しそうな視線を私に送る。
 その視線に心を射抜かれた私は、はやてから貰ったデート用グッズを乱暴に引き開けると、砂竜エキス入り強精剤のキャップを三本分まとめて外し、立て続けに一気飲みしてみせた。

「んくんくんく‥。っぷはぁ!」

「フェ、フェイトちゃん、その手の薬ってそんな風に一気飲みしちゃ‥」
 私は手の甲で唇を拭うと、慌てるなのはを振り向き、サムアップしながらにっこり笑ってみせた。
「これでスタミナ一二〇%充填! いや、三本だから三六〇%充填だよっ! 後一昼夜ぐらいは寝なくても大丈夫っ! デートしよう、なのはっ!」
「そんなに気合入れなくても‥それに明日も仕事だから、今からじゃデートに使えるのは三、四時間って所じゃないかなあ」
「ううん、いざとなったら徹夜も辞さない覚悟で! あ、いや、その‥これは意気込みの問題で、本当に一夜を共に過ごすとかじゃなくて‥」
「変なフェイトちゃん。夜はいつも一緒(の部屋)じゃない」
「そ、それはそうなんだけど‥そういう意味じゃなくて‥ごにょごにょ
「まあ、フェイトちゃんが元気になってくれたのなら、問題はないかな」
と、その時またもや念話が入った。
 私の無詠唱念話プロトコル魔法は視覚表現でも安全だと判断したらしく、はやての華やかな花押が眼前の空間に描かれていく。光の粉を纏いつつ花押の表示が終わると、念話の本文が心に響いた。

「あー、あー。そのな、さっきのフェイトちゃ‥ハラオウン執務官のデートやけどな、意中の人はなのはちゃん‥やない、高町教導官やそうや。そやからな、フェイ‥ああ! もうええわっ! フェイトちゃんと同様に、何人たりとも、如何なる事情があろうとも、決して、なのはちゃんの邪魔をしたらあかんで! ええな! わかっとるな! ‥終わりやっ!」

 今度はリインじゃなくはやて本人のようだ。何だか妙に困惑と悔しさとやけくそが混じっているような気がする。
 そしてこれはさっきと同様に、後ろの六課隊舎、前の六課隊員寮の双方から、歓声だの、悲鳴だの、何かがひっくり返る音だのが遠く聞こえてきた。
 そりゃそうだろう。部隊付き執務官と戦技教官のデートの邪魔をしないよう部隊長命令が入ったんじゃあ‥。

 なのはは腰に手を当て、胸をはって、何だか満足げな顔をしている。
「よしよし。部隊長のお墨付きが出たから、面倒な手続き無しで外出できるね。ああ言った以上、もし私とフェイトちゃんがいない間に緊急出動がかかっても、はやてちゃんが善処してくれるだろうし‥」

 うわっ、黒っ!

 く、黒いよ、なのは。そんな効果も狙っていただなんて‥私の代わりに仕返しって言ってくれたのは‥あれは嘘?
 でも、そんな悪賢いなのはも素敵だけど‥何というのか、渾然一体となった凛々しさと禍々しさと雄々しさと阿漕さが‥いわゆる悪の魅力?
 私がそんな事を考えてうっとりとなのはの横顔を見つめていると、くるりとなのはが振り向き、おどけた様子で私に曲げた腕を差し出した。
「じゃあ、デートに参りましょうか、フェイト姫」
 あっけにとられた私は、次の瞬間真っ赤になり、おずおずとなのはの腕に手をかける。
「は‥い‥」

                          ‥※‥

 それからの事は何だか、混沌とした夢の中の記憶のような印象しかない。

■PTDを呼ぼうとするなのはを押し止めて、私の車で行く事を提案した。(だって、PTDじゃ、『すっかり迷ってしまったね。疲れたし‥あ、こんな所にホテルが。なのは、あの、ちょっと休んでいかない?』ってテクニックが使えないじゃないっ!)
用語解説 PTD(パブリック・トランスポート・デバイス)
 地球のタクシーのような公共交通機関だが、魔導工学による擬似インテリジェント・デバイス・システムが導入されているので、運転手無しでの自動走行が可能。


■はやてお薦めのクレヴェニアンレストランは海のすぐそばで、案内された窓際の席では壮麗な初夏の日没を堪能できた。

■素晴らしい料理に舌鼓を打った。(なのはの存在は私にとって最良のスパイスだから、その分を差し引いたとしても素晴らしかった)

■湾に沿って、ミッドチルダ中心街方向にドライブした。(私の隣に座るなのはの髪をなびかせて、潮風がオープンにした座席をふき抜ける。なのはの横顔越しに銀河降る静かな海が見えた)

■湾岸にそびえるシティホテルの展望ラウンジに上がり、フェイアリンでなのはと乾杯した。(残念ながらラブホテルじゃなかったけど‥でもクリスタルの煌きと柔らかな間接照明の中のなのはは、いつもと違う複雑な陰影に富んだ魅力を発揮していて‥この十年間に、私はいったい何百回、何千回なのはに惚れ直したんだろうね)
用語解説 フェイアリン
 管理世界で広く嗜まれているクレヴェニア産の樹液を発酵させて作る飲料。アルコールは入ってないが、軽い高揚感を引き起こすある種の刺激性アルカロイドを含む。アルコールと違って年少者にも害が少ないので、若年就労者の多いミッドチルダでは公式の席の飲み物としてよく使われる。


■お靴やお船や封蝋や甘藍に王様ぞろぞろと‥久し振りに色々な話をした。友人や家族や‥過去の事、現在の事、‥そして未来の事。

■隊舎に戻って、交替でお風呂を浴びいっしょのベッドに入る。昼間の浮れぶりを考えると、自分の理性が正しく機能するか心配だったけど、幸いにして杞憂に終わった。それどころか、二週間ぶりに感じるなのはの気配と香りは、この日に限っては鎮静効果があったらしく、私は久し振りに、朝まで夢も見ないでぐっすり眠った。

                          ‥※‥

 時間を少し戻し、なのはの念話を受け、はやてが追加念話を行った直後の部隊長室。
「なあんだ、フェイトさんはなのはさんとお出かけですか。デートじゃなかったんですね‥つまんないの」
 リインはちょっとがっかりした風情で、座っているミニチュアサイズの椅子をコーヒーカップの如く、くるくる回している。
 (模擬戦が中止になって)執務が早く終わり、はやてとリインを迎えに来ていたヴィータが大袈裟に頷いて、リインに同調する。
「本当だよな。相変らずなのはは人騒がせな奴だぜ」
 ヴィータは最初の念話が全部はやての悪ふざけだと知らない。今回の騒ぎの元凶はなのはとフェイトだと思っている。
 ちなみになのはだけが非難の対象となっているのは、ヴィータの標準的な反応である、『機会があれば、取り敢えずなのはに突っかかる』を実践しているからだ。
 何となく不貞腐れた様子のはやては、それでも関西人の性なのか、二人にちゃんと突っ込む。
「いやリイン、それにヴィータ。デートは本来『二人で出かける』事やから間違ってはないんやで」

「でもでもぉ、はやてちゃんからお借りした小説でもマンガでも、デートは男の子と女の子(きゃ♪)が一緒にお出かけしていましたですよ」
「ま、大人にはいろいろあるんよ。‥そろそろリインにも読ませてええかもしれんね、BL系とか百合系の同人誌も」
 はやての呟きを聞きつけたヴィータがはやてのデスクに走りより、声を殺して、しかし、真剣に異議を唱える。
「いやはやて。それはちょっと‥リインだけは勘弁してやってくれ」
 ヴィータは海鳴市で暮らしていた頃、はやての姦計に引っ掛かってその手の薄い本をイヤというほど読まされ、同人誌即売会への参加の手伝いをやらされたあげく、若年性腐女子の一歩手前まで追い込まれた苦い経験がある。
 そんなヴィータの様子を本気で気がついていないのか、それとも故意に無視しているのか、はやてはヴィータの頭を撫でながら、自分の思いに耽っている。

「しかし‥まさかあの天然なのはちゃんから逆襲を受けるとは‥弄られキャラに弄られる‥これほどの屈辱はあらへん。八神はやて一生の不覚や」

「一生の不覚って‥なのははそこまで酷い天然かよ?」
「でも、『瓢箪から駒』とはこういうのを言うんやろなぁ。ちょおフェイトちゃんをからかうだけのつもりやったのに‥まあ、フェイトちゃんには喜んで貰えたやろうから、結果的にオーライちゅうことで」
 勝手な理屈を呟いているはやてにヴィータの声がちょっと大きくなる。
「はやてっ! ちょっとは人の話もきけよ、こらっ」
 大きくなったヴィータの声に驚いたリインが椅子の回転を止め、ヴィータの方を振り向いた。
「どうかしましたですか? ヴィータちゃん」
「い、いや。何でもねえ‥」

「さて、フェイトちゃんの幸せの為に、次はどんな手を打つべきか‥や」

 ヴィータは慌てて、声を殺した抗議を続ける。その様子をリインがきょとんとして眺めている。
「はやてっ! 『幸せの為に』なんて嘘だろっ。今、『結果オーライ』って言ったじゃないか。そう引っ掻き回そうとせずに、なのはとテスタロッサを放っといてやれよ!」
 はやては一瞬驚いた顔をすると、嬉しそうに微笑みながらヴィータの耳に顔を寄せ内緒話を始める。
「いやいや、部隊長として部下の幸せを祈る気持ちに偽りはあらへんよ♪」
「どうだか」
「信用ないなあ。で、ヴィータの本命は? フェイトちゃんか? それとも、なのはちゃんか?」
「‥って!」
 はやては少しだけ真面目な顔になると、一段と声を顰め、冗談と真面目の境界ぐらいの様子で囁いた。
「言っておくけどな、あの二人はあかんよ。難易度高すぎや」
 はやてに耳打ちをされてたヴィータの顔は見る見る赤くなったが、リインがいるので、はやてを怒鳴ったりはできない。
「そ、そんなんじゃねえっ」
 小声で言い返して、後は思い切り睨みつけるのがせいぜいだ。
 睨みつけられたはやての方はヴィータに言いたい事を言い終わると、後はどこ吹く風といった風情で残りの執務の片付けに没頭しだした。

「ヴィータは可哀想やけど、あの二人は相思相愛やから‥。それにしても、なのはちゃんさえ自分の気持ちに気がつけば、話は早いんやけど‥朴念仁いうのは、ほんまにはた迷惑やし‥度し難い存在やなあ」

 はやての微かな呟きは、ヴィータにもリインにも聞こえなかった。

                          ‥※‥

 こちらは夜更けの機動六課隊員宿舎の一室。八神部隊長の悪ふざけの犠牲者その二が盛大にめそめそ泣いている。
 もちろん泣いているのは、昼間の念話で、なのはさん争奪バトル・ロワイヤルに最強のライバルが登場したと悟ったスバル・ナカジマである。
 そして私、ティアナ・ランスターは(私の)ベッドに腰を下ろして泣き続けるスバルの隣に座って、膝に携えたティッシュペーパーでその涙を拭き、鼻をかんでやる役を自らに任じている。
 いや、こんな馬鹿くさい役目を担っているのは、スバルに、早く泣き止んで自分のベッドに戻って貰いたいからだ。それ以上でもそれ以下でもない。
 とはいえ、いい加減馬鹿馬鹿しくなってきたのも事実で‥。
「ぐすっ、えっく、ぐしゅぐしゅ‥」
「ああ、鬱陶しい! 何時まで泣いてる気なの? あの念話聞いてから何時間たってるのよっ!」
「だって、だって‥フェイトさんはなのはさんの幼馴染だし、同室だし、すっごく強くて、誰にでも優しくて、非の打ちどころがないほど綺麗で、ずば抜けて優秀で‥私に勝ち目なんて、全然ないし‥」
「‥ったく、何言ってんのよ。そんな事無いでしょう」
「えっ? それって‥」

「勝ち目も何も‥。なのはさんの相手が、フェイトさんだろうが、フェイトさんじゃなかろうが、そもそもスバルには欠片も脈が無かったんだから」

「‥‥‥‥‥ティアってばひどいっ!」
「事実でしょうが」
「うわあああんっ!」
 泣き声が一段と大きくなったと思うと、スバルが私の胸にしがみ付いてきた。
 『ティアってばひどいっ!』とか言っていた癖に‥とも思ったが、まあ無碍に押しのけるのも可哀想だし‥と思って、暫くそのままでいた。
 ところが、最初こそ大人しく泣いていたスバルが、泣きながら顔を小刻みに左右に振って、私の胸におかしな刺激を加えだした。

すり。
「ん?」
すりすり‥。
「ちょ‥スバル?」
すりすりすりすり‥。
「あんた、わざとなの?」
すりすりすりすりすりすりすりすり‥。
「あ‥んっ‥」
すりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすり‥。

「ど、どさくさに紛れて‥人の胸の感触を楽しんでるんじゃねーっ!」
 焦り気味に繰り出した私の鉄拳は、それでも狙いを過たずスバルの顎に炸裂した。例によってスバルは弾き飛ばされるように床を転がり、壁に叩きつけられた。
 私はまず荒い息を整えた。勿論鉄拳を放ったせいでなく、スバルに胸を弄られたせいだ。次に大の字になって床にのびているスバルの様子を確認する。うっかり本気で殴ってしまったから心配だったが、頑丈なスバルは大したダメージは受けていないようで‥、
「くー、くー」
 ‥って、寝てるじゃんっ!
 長時間泣いていたから、疲れていたのだろうか。スバルは頬に涙の後を残したまま、それでも何だか安らかな表情で眠り込んでいた。

「お前は子供かっ!」

 スバルに毒づいてみたが、起きる様子がない。
「まったくもうっ! ヘンな刺激を与えるんじゃないわよ。そのせいで私があんたを襲いたくなったら、いったいどうしてくれるのよ‥」
 ついでに文句も言ってみたが、やはり起きる様子がない。‥というか、この台詞を言っている最中に起きられたらちょっと困る。

 私は溜息を一つつくと、スバルの膝裏と背中に手を回し、いわゆる『お姫さま抱っこ』で抱えあげる。
 あどけないスバルの寝顔に心は揺れたが、何とか自分の衝動を押さえ込んで、スバルを私のベッドに寝かせた。(高町教導官の特訓を日々こなしている私やスバルは、同年輩の女の子一人ぐらいは楽に持ち上げられるが、流石に二段ベッドの狭い梯子を登るのは危険なので、今夜はスバルとベッドを交換する事にした)
 もう一度スバルの呼吸を確認して毛布をかける。

 私は普段スバルが使っている上段のベッドに登りながら、スバルに聞こえないように(よく考えれば、どう見ても熟睡しているスバルに聞こえるはずはないのだが)小さく呟いた。
「失恋か‥可哀想に」
 これは同情じゃない。むしろ自己憐憫だ。
 私もスバルに失恋する可能性は大だし、その時はスバルと違って、恋人候補だけじゃなく親友も失う事になるのだから。
「でもっ! 諦める気はないんだからねっ、スバル」

                          ‥※‥

 なのはの香りと気配に包まれ、ベルベットの様に深く優しい眠りに誘われて、意識を手放す最後の瞬間に私は想う。

ねえ、なのは。
私はなのはが好きだよ。
世界で一番好きだよ。

うん、分かってる。
勿論分かっているよ。
いつかはきちんと決着をつけないといけないって。
このままずっと過ごす事なんて出来ないって。

「永遠なんてないよ。みんな変っていかなきゃいけないんだ」

なのはの言う通りだね。
でも、今だけはこのままでいさせて。
居心地のいいなのはの隣に‥ただの友達として。

今だけでいいから。

おわり

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コメント
No title
久々に拝見に参りましたら……ええと、もずるさま。

何て ごっついお話 書 い て ら っ さ る ん で す か っ ! 

あんまりにもらしい三人娘たちの活躍っぷり(と言ふにはフェイトさんが余りにも……/逸らし目涙)に取敢えず胸がドキドキです。そりも原作時間軸に沿った素敵展開&スバティア(てーかティアスバ?)付き……なんて美味しさ三乗効果……。
今後もこそりと期待しておりますです、取敢えずStS最終回までこの調子でお願い致しますです(平伏)。ではでは!
朴念珍なのハ
高町兄妹の仕様ですからね……
それにしても、スターライトブレイカー級のSSを朝から読むもんじゃないですね。

最後に一言

グッジョブ!!
No title
お姉さま素晴らしいですーっ!
猫子は感激しておりますですよー!

で、次はマリみてですね♪楽しみにしてますからね(微笑)
お読み頂きありがとうございます。
> 一橋@胡乱さま
(なのは道の)お、お師匠さま! ようこそおいで下さいました♪ ささっ、陋屋ですが、ずずぃっと奥にどうぞ。
> フェイトさんが余りにも……/逸らし目涙>
ああ! す、すみません。
原作だと、なのはさんはツッコミどころ満点(特に砲撃とか‥)なんですけど、フェイトさんって過保護ぐらいしかツッコミどころが無いんですよね。で、フェイトさんの、「なのはさんを前にすると『恋する乙女モード』が発動する」部分をつい誇張したくなるんですっ(土下座)
> スバティア(てーかティアスバ?)
スバルはさらっと、「ティア、大好きっ!」って言ってますからねー。やはり、「ティアナが実は‥」って設定の方が書いていて楽しいのです♪(こういう所だけ、弩S)

> かーなさま
> スターライトブレイカー級のSS
あ、ありがとうございますっ。(大平伏)
なのはさんの砲撃に惚れ込んで道を誤った(?)人間にとってこれ以上はない賛辞です!
> 高町兄妹の仕様ですからね
あ、それはもしかして、トラハの方の設定ですか?
うーん、トラハもチェックした方がいいのか‥。

> 猫子
ありがとう♪(微笑)
> 次はマリみてですね♪
うわっ、か、可及的速やかに‥ねっ?

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