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みんなが幸せになる話はいいですね♪

2008年01月13日
 冬コミにも行ってきました。
 といっても今回はサークル参加でもなく、お手伝いでもない一般参加で、二日目(ちなみに「なのは」は三日目です。うちの母屋は、「マリみて二次創作」サイトですので‥)だけ、それも午後には実家に里帰りしますので、午前中だけの参加となりました。
 まあ、主たる目的は寄稿させて頂いた「瞳子おめでとう本」を受け取りにマズルカSTEPさまをお訪ねする事ですから‥。

 知り合いのサークルに挨拶に回り、瞳子おめでとう本を無事手に入れ、友人に頼まれた本も購入し、必要な用事は無事済ませたのですけど‥ざっと回っただけで同人誌を二万円分ぐらい買い込んでいる自分が恐ろしい。(千円札で三万円持ってましたから被害は少なかったのかもしれませんが)

 大部分はマリみて本ですが、少しですけど、なのは本も手に入れました。
 その中でぱるくすさまの新刊「PN4」が今回のお気に入りです♪
 「みんなが幸せな話が大好き」という作者さまの優しさ溢れるストーリー展開と丁寧で上品な絵が相まって、読むと幸せな気持ちになれます。80、81ページのフェイトさんの心情なんか考えると、思わず涙してしまいます。(61~67ページのフェイトさんに関するリンディさんとエイミィさんの誤解(じゃ無いけど、ちょっと早過ぎ)には思い切り笑わせてもらいましたが
 ホームページの方に内容の一部も紹介されていますし、メロンブックスさんととらのあなさんで委託販売なさっているそうですから、この機会にお薦めさせて頂きます。

 それでは、『フェイトとなのはのDay by Day』第三回の二です。
『フェイトとなのはのDay by Day ―デート― ★起★』 に戻る

『フェイトとなのはのDay by Day ―デート― ★承★』

 抵抗空しく部隊長室から追い出されてしまった。
 そっちがその気ならこっちも、『バルディッシュで扉を叩き壊すぐらいしても構わないのじゃないか』という凶暴なアイデアが一瞬脳裏を過ぎったけど、さすがに大人気ないので自重した。
 出張そのものよりも報告‥さらに厳密には、報告の際の雑談で(精神的に)疲れた私は、足どり重く広域捜査班のオフィスに向かう。

 廊下に沿った部隊長室の並びには、ガラスの間仕切りで廊下と仕切られたロングアーチの執務室がある。忙しく執務に励んでいるはずのスタッフは全員手を止め、目を丸くしてガラス越しにこっちを見ている。
 ああ‥あの恥ずかしい念話を聞かれたんだと思い、私は俯き加減で執務室の前を通り過ぎようとした。
 するとロングアーチのスタッフがいきなり走り出てきて、私の周囲を取り囲み、口々に話しかけた。よく見ると、ロングアーチのスタッフだけじゃなく、念話を聞いて、私やはやてを見物に来たらしい、各部署の物見高い連中も混じっている。
「フェイトさんっ、頑張って下さい!」
「私たち応援していますねっ」
「いや‥あの‥」
 何でみんな、そうも嬉しそうに激励してくれるのっ!?
「乾坤一擲ですよっ! フェイト執務官」
 うわあ‥そんな無駄に力の籠もった励ましを頂いても‥そもそも頑張るべき事はないんだし‥大体デートに『乾坤一擲』って使うか? 普通。
 もう、はやての念話の件はばっくれて、連絡事項だけチェックしたら、自分の部屋に戻って布団被って寝ちゃおうかなあ‥。二週間、なのはが独りで過ごした部屋だもん。なのはのフレグランスを思い切り堪能できるはず♪ そして私のなのは分欠乏症を癒すんだ。

 こらっ、そこっ。私の事を臭覚フェチの変態だと思っているでしょうっ! まあ、そう思われても仕方が無いとは思うけど‥。
 でもね、好きな人が出来れば分かるって。想い人の香りがどれほどに魂の高揚と心の安らぎという相反する二つの情動を与えてくれるのか‥(うっとり)‥だ、だからっ! 変態じゃないって言ってるでしょうがっ!

「お帰りなさい。フェイトさん♪」
 聞きなれた声が、私を妄想から醒めさせた。声のした方を振り返ると、丁度シャーリーことシャリオ・フィニーノが執務室の向かいのC3I(指揮、統制、通信、情報)管制室へ通じる廊下から顔を覗かせたところだった。
「ただいま、シャーリー。こっちは変りなかった?」
 シャーリーは私の前まで走り寄ると、いつもの人のよい笑顔を浮かべて答える。
「ええ、平穏な二週間でした。フェイトさんこそ大変だったんじゃありませんか? すみません。ご一緒できなくて」
「いや、殆ど事後処理だけみたいなものだったから大丈夫だよ。詳細なレポートが出来たらシャーリーのデスクにも送っておくから、目を通しておいてくれるかな」

 当たり前だけど、執務官としての出張の場合、軌道六課に出向になるまでは補佐官であるシャーリーにも同道を頼んでいた。
 しかし先月、フォワードのメンバーに実戦用デバイスを装備させたばかりだ。実働に基づいたデバイスたちの最終調整が佳境である今、デバイスの製作、整備主任でもあるシャーリーが二週間も部隊を空ける訳には行かない。
 だから、シャーリーと相談した結果、今回は留守番をお願いした。
 シャーリー自身は通信士科を卒業し、デバイスマイスター資格を保有している事から分かる様に、精密機器関連の仕事が結構気に入っているみたいだし、その方面の才能も技量も十分すぎる程にある。
 だから、シャーリーを機動六課に招聘した時も、私の補佐官としてではなく、通信主任兼デバイスの製作、整備主任という形で依頼した。
 そう考えると、機動六課解散後は、シャーリーをあまり四角四面に執務官の仕事に縛り付けないほうがいいのかもしれない。もちろん、シャーリーの今後の志望次第だけど。
 もしシャーリーが補佐官の継続を望んでくれれば、それは嬉しい。シャーリーの広範な知識と多角的な分析力は失うには惜しいし‥でも、その場合でも、私が為すべきはむしろ、もうひとり誰か別に補佐官を任命して、シャーリーの負担を減らしてあげる事だと思う。

「はい、ありがとうございます。あ、でも、フェイトさんはこっちでも大変な事になってますよね‥さっきの念話って、その‥部隊長の‥」
 シャーリーが気の毒そうな表情を浮かべている。まあシャーリーは普段からはやてのセクハラの犠牲者の一人(ちゃんと反撃している(!)そうだから、一方的に被害者とは言えないけど‥)で、はやての悪乗りにはそれなりに慣れているはずだ。それにシャーリーの分析力なら、さっきの念話の裏事情もある程度推測できるのだろう。
 やはりシャーリーは大切な私の右腕だ。私は漸く私の状況を理解してくれる友を見出して、少しほっとしつつ、自分の気持ちを吐露する。

「うん、あの念話でどっと疲労が噴き出した気がする。それにしても、はやての悪ふざけは何とかならないものかなぁ」
「私はみんなに仕返しを勧めていますけどね。部隊長はむしろ、そういうリアクションを待ってらっしゃるのではないかと‥」
「確かにはやてはそうした反応の方を喜ぶだろうけど、はやての事だから仕返しの仕返しとかに走るだろうし‥。無駄に色々長引くんじゃないかな」
「あははっ! 言えてます。部隊長とは仕返しの応酬で、もうどれだけ胸を揉み合ったか知れませんもの。そろそろ回りの人たちからは『変な関係じゃないか』って勘ぐられてるらしいですし♪ 自重しようかって、部隊長とも話してるんですけどねー。会うとついつい、お互いに積年の遺恨に駆り立てられて‥」
 なんというか‥楽しそうだね、シャーリー。
 シャーリーの声が聞こえたスタッフが、周りで苦笑を漏らしている。苦笑しつつも微笑ましげな表情を浮かべている所から察すると、二人の(ある意味)死闘をたまさか目撃しているんだろうな。

 ところが妙に嬉しそうにはやてとの死闘を語っていたシャーリーはふと気がついたように話を止めて、なんだか気遣わしげな表情になると私に問いかけた。
「あ、そうだ。フェイトさん、あの‥」
「何、シャーリー?」
シャーリーがかすかに頬を染め、一段と声を顰めて尋ねる。
「えーと、その、いざという時の為に‥ちゃんと勝負下着、着用していらっしゃいますか。もし必要でしたら、私、ロッカーに常備しているのがありますから、お貸し出来ますけど」

 ‥‥‥‥‥‥シャァーリィィィィッ!

 さっきの念話ははやての悪ふざけだって理解してるんじゃないのっ!? だから当然デートはないんだよっ!‥もしかして、はやての念話は悪ふざけでもデートは事実だとか思っているの?
 私まだ、そんなにそわそわしてる?
「‥あ、ブラジャーは私のサイズじゃ無理ですよね。えっと、誰かから借りるとして‥」
 ‥‥余計なお世話だっ! つーか、それに‥そもそも、なんでそんなモノをロッカーに常備してるの?

 もうひとつ言うとね、私は常時勝負下着を着用してるのっ! なのはと同室になるって決まった日に、手持ちの下着を一枚残らず、勝負下着レベルのに買い替えたのっ!
‥そりゃあね、なのははね、全然気が付いてくれないけどね。
‥出来るだけ、なのはに見える所で着替えるように、気をつけてはいるんだけどね。
‥なのははそれを見ても、「フェイトちゃんってば、私がフェイトちゃんに見える所で着替えたら、『はしたない!』って怒るくせに♪」と言って笑うだけだけどね。

「フェ、フェイトさん、どうしたんです? そんな涙目になって」
 シャーリーの声が元の大きさに戻っていたけど、私は勝負下着の思い出(!)に気を取られていて、(またもや)その事の危険性に気付かなかった。
「うん‥、シャーリーの気持ちが嬉しくて‥ありがとう。でも、大丈夫だから」
「そんな‥気にしないで下さい。フェイトさんの為なら私、協力を惜しみませんからっ!‥ちょっと待っていて下さいね」
「え?」
「すぐ持ってきますから。すっごく可愛くてセクシーなショーツなんですよっ。私のお気に入りなんですっ!」
 ちょっと待てっ! そんなモノの貸し借りはしないでしょ、普通。それに、その事をまた大きな声で‥って、ああ! 私、デートの事を否定してないっ!

「ショーツの貸し借りに‥シャーリーさんの気持ち‥フェイトさんのデートのお相手は、シャーリーさんだったのですかっ!」
「な‥っ!」
「そういえば‥六課にいらっしゃる前から、しょっちゅうご一緒に長期の旅行を‥」
 それは出張だっ、出張っ! 補佐官が執務官に同行するのは当たり前でしょうがっ!!
「ああ。今回はご一緒できなかったから、フェイトさんが欲求不満でイライラなさっていて‥で、部隊長が気を使われて、あの念話を‥」
「八神部隊長って、本当に気配りの行き届いた素晴らしい上官ですね‥」
 まてぃ! 私の事をどういうキャラだって思ってるんだっ!
 それにはやてがそんな気遣いをするタマかっ!(失礼、つい言葉が悪く‥) 第一、そんな所に気を使って欲しくないっ!
 シャーリーの話を聞いていたロングアーチのスタッフによる勝手な評価に、最初こそいちいち反駁していた私だったが(ただし、心の中で。みんなの話題が転換していくスピードに追いつけなくて‥)、くだらない事を否定しなければならない心理的な疲労が蓄積するにつれ、反論を組み立てる気力も無くなってくる。(だから、こんな場合は論旨を組み立てたりせずに、思いついた事をすぐ口に出さないとダメなのかもしれないな‥といつも思うのだけれど)
 そして私は少しぼんやりとして、みんなの話がどんどんとんでもない方向に発展していくのを聞くとも無く耳に入れつつ、その場に佇んでいた。

                          ‥※‥

タンッ!

 何か硬い物で床を鋭く叩く音が背後で響き、明るい澄んだ声が私たちの耳朶を打った。
「テスタロッサ、ここにいたのか」
 みんなが一斉に声の方を振り向くと、騎士甲冑を纏った美貌の女性が、体の前に屹立させた長剣の柄に両手をかけて仁王立ちしていた。
 目にした人間の十人中十人が賛嘆の溜息を洩らす事間違い無しの完璧なプロポーションを誇る偉丈婦。言わずと知れた、はやての守護騎士ヴォルケンリッターの将、シグナムである。

 さっきの音はその長剣レヴァンティンの鐺(こじり)で床を打った音だったらしい。
 シグナムは私を真直ぐに見つめると、やにわにレヴァンティンの柄を片手で握り直し、まるで舞踏の様に流麗な動作で、鞘に収めたままの剣を振りあげ、上段に構えて見せた。
 ほんの数瞬、その構えを維持した後、シグナムは雷光を思わせる速さでレヴァンティンを振り下ろし、ほぼ水平の位置でぴたりと制止させた。レヴァンティンの鐺は正確に私に向いていた。

 普段のシグナムは、決して今みたいな大袈裟な所作はしない。寡黙で物静かで、いっそそっけないくらいだ。(もっとも、付き合いの長い友人‥例えばなのはや私‥には、それなりに冗談を言ったり、ふざけたりすることもあるが)
 そのシグナムがこうした派手なパフォーマンスをしてみせるのは、よほど機嫌がいい時に限られる。しかも今日は更に珍しい事に、頬を上気させて心中の興奮を顕わにしている。
 シグナムは私に向けた鐺を微動だにさせないまま、私に大音声で話しかけてきた。

「この二週間、今日という日を一日千秋の思いで待っていたぞ、テスタロッサ!」

「えーっ!?」
 一瞬置いてみんなは信じられないという悲鳴を上げた。
 勿論、私にはシグナムが何を一日千秋の思いで待っていたのか見当がつく。でも、今この時点で、シグナムのその表現は拙い、大変に拙い。明らかに、みんなはある種の誤解を抱いてしまっている。
 でも、実際にもう口をついて出た言葉は訂正出来ない。取り敢えず私はシグナムに本意を質す事で、事態の収拾を図ろうとした。
「シ、シグナム。何の話ですか?」

「部屋は予約してある。さあ、はじめよう!」

「ええーっ!?」
 ‥最悪だ。疲れが倍加したような気がする。シグナム‥お願いだから、もう少し言葉を補って下さい。いつもながら省略が過ぎます。『意思疎通に最低限必要な分』だけでいいですから‥『意思疎通に十分な量』とまでは期待しませんから。

「個室を用意して、始めるって‥やっぱりその‥」
 個室じゃなくて、部屋だっ、部屋っ!
「さすが、シグナムさん‥表現も大胆で直裁‥」
 そこ! 顔を赤らめないっ!

「フェ、フェイトさんのお相手って‥シグナムさんだったのですかっ!?」
 スタッフの一人が声を震わせながら、恐る恐るシグナムに確認しようとすると、シグナムは何を今更といった調子で答えた。

「私以外の誰にテスタロッサの相手ができるというのだ。テスタロッサはこの上もなく激しいのだぞ」

「えええーっ!?」
 うわ‥またそんな。誤解を助長するような表現を‥。だからその辺、こっちみて赤くなるんじゃないっ! 何を考えてるんだ、まったく。‥って解ってるけど。
「でもシャーリーさんは‥すると、フェイトさんって二股?」
 人聞きの悪い事を呟くな! 私は十年前から、なのは一筋だあっ!

「またテスタロッサ以外の誰が、疲れ知らずの私の相手を努められるというのだ」

「ええええーっ!?」
 あ゛ーっ! 私は頭を抱えて蹲ってしまった。いっそ、何もなかった事にしてこのまま眠ってしまおうかな‥。
「そんな、そんな‥私のシグナムさんが‥。わーんっ」
 何人かのスタッフが泣きながら駆け出して行った。多分シグナムファンクラブのメンバーだろう‥かわいそうな事をしてしまった‥じゃない!

用語?解説 ファンクラブ
 シグナムは、こと剣戟による格闘戦においては間違いなく管理局随一の実力の持ち主である上に、古き善き騎士道精神の生きた見本で、しかも見目麗しく颯爽としているから男女を問わず人気があり、機動六課のみならず管理局全体にわたるファンクラブが結成されている。
 もっともファンクラブ自体はシャマル先生やヴィータ、はやて、‥恥ずかしながら私についても結成されている。なのはにいたっては、管理局を超えて一般市民の主導で結成されてしまったファンクラブがある。(しかもそのファンクラブは結成後に、管理局広報部から強引に公認を毟り取っている)
 かつてマス・メディアを使った管理局のイメージアップ戦略のコア・キャラクターとして抜擢された時にアイドル並みの人気を博してしまった結果だ。本人は「有難迷惑だし‥管理局の為とはいえ二度とごめんだよっ」とぼやいている。
 私もこれ以上ライバルが増えるのは願い下げにしたい。管理局広報部には強く自重を望む。


 みんな落ち着いて、お願いだから。
 シグナムが今、着用しているのは騎士甲冑‥いわゆるバリアジャケットだよ。いかにシグナムといえども、まさかバリアジャケット姿でデートには出かけないはずだよ‥たぶん。

 私は壁に縋るようにして身を起こし、シグナムに聞かずもがなの質問を始めた。
「えーと、今更ですけど‥その、シグナム?」
「なんだ、テスタロッサ? それにみんなも何を騒いでいる?」
「シグナムが私と始めようとしているのは‥」
「無論、模擬戦だ。クロスレンジ、しかも剣戟となると私の相手をしてくれる者はめったにいない。テスタロッサ、機動六課ではお前の存在が唯一の頼りなのだ」

 ‥やっぱりか。

 残っていたスタッフは一斉に脱力して、さっきまでの私の様にしゃがみこんだ。死屍累々の風景の中、シグナムだけが一人屹立し、きょとんとした表情で周りを見回している。
「あの‥シグナム。さっきのはやての念話は受け取らなかったのですか?」
「ああ、それは拝聴させて頂いたが‥てっきり主はやてが気を遣って下さったのだと思っていた」
「その、気遣い‥って?」
「漸く六課に帰投して、久し振りの模擬戦を楽しみたくても、まず仕事を優先してしまう生真面目なテスタロッサを思いやっての画策なのだろう?」
 シグナムは軽く目を閉じると、慈しむ様な微笑を浮かべ、言葉の隅々に敬愛の念を滲ませて、静かに続けた。

「我が主はいつも、どんな時も、私たちや部下に対して細やかな気遣いをお忘れにならない優しい方だから‥」

 確かにはやては、根本の所では誠実で思いやり深い優しい子ですけどね‥。同時に、必要なら権謀術数を弄するのを厭わないし‥むしろ必要がなくても弄するぐらいに悪巧みが好きだし。糅てて加えて、親しい人に悪ふざけを仕掛けるのを無類の楽しみにもしているじゃないですか!
 はやての行動がいつも思いやりに基づくものと考える事は危険です‥って言っても馬耳東風だろうな。
 私の事を生真面目なんて決め付けているけど、シグナムこそはやての守護騎士たちの中でも飛びっきり生真面目で、しかもこの上も無くはやてへの忠誠心が厚いから。

「それに朴念仁という点では、なのはといい勝負のテスタロッサだ。そのテスタロッサが今更、色恋沙汰に関心を持つとは思えない」

 失礼なっ!

 シグナムが目を閉じたまま腕を組み、『これは間違いない』といわんばかりに力強く頷きながらそう呟いたけど、それには強く抗議したい。
 あのシグナム、私は色恋沙汰に関心がないのではなくて、十年前から執念深く継続している初恋で手一杯なだけです。
 ‥まあ‥確かに、なのはは筋金入りの朴念仁だと、私も思いますが。

「そ、それはともかく。すみませんが、今日のところは模擬戦は遠慮させて下さい。出張から戻ったばかりで完調とは言いかねますし」
 本当は、出張ではなく帰投した後に、精神的に疲れたのですが‥あなたの主であるはやての起こした騒ぎで‥勿論、シグナムのせいじゃないですけど。
「む‥それはそうだな。すまない。私とした事が‥」
「あ、いえ。そんな‥」
「おまえとの手合わせに浮かれて、当然為すべき配慮が足りなかった。模擬戦の件は後日改めて願う事としよう。今日はゆっくり休んでくれ」
 そう言うと、シグナムはレヴァンティンをスタンバイモードにして、騎士甲冑を解除し制服姿に戻った。そして、少々しょんぼりとした様子で後ろ手に手を振りつつ、屋内模擬戦闘室の方に戻っていった。
 確かに、シグナムのバトルマニア振りには困る事もある。(なのはには、「フェイトちゃんも同類じゃない。殆どの場合、シグナムさんの挑戦を二つ返事で受けちゃうんだから」って笑われているけどね)でも、こんな時はちゃんと私の事情を斟酌してくれる。間違いなく、得難い好敵手であり、信頼できる同僚であり、大切な親友だ。

                          ‥※‥

 シグナムとの会話で何となく気力が戻ってきた私は、精神的に挫けたままのロングアーチのメンバーに別れを告げて、広域捜査班のオフィスに戻った。
 そこでも、妙な視線が集中するのを感じたが、一応、直接の上司である私に遠慮しているのか、周りを取り囲んで問い質す様な事はなかった。(いや、もちろんロングアーチのメンバーだって、本人たちは善意に基づいて励ましてくれたのだ、と理解はしています)

 そうした気配には気がつかない振りをして、自分のブースに向かおうとした私を誰かが呼び止めた。
 振り向くと、はやての副官のグリフィス・ロウランがオフィスの入り口で敬礼をしながら、入室の諾否を問うていた。堅苦しいといえばそうだけど、グリフィスのそうした折り目正しさはむしろ清々しい。
 グリフィスに入室の許可を与えると、私に妙な視線を投げ掛けている広域捜査班のスタッフを怪訝な表情で眺め回しつつ、おっかなびっくりの体で近づいてきた。
「フェイト執務官、部隊長から預かり物があります。直接お渡しするよう言付かって参りました」
「ありがとう、グリフィス」
 はやてが託したというシューズボックスの四半分ほどの箱をグリフィスから受け取った。その箱は何かのプレゼントの様に綺麗に包装されて、リボンまで掛けられている。
「‥それにしても、これは一体何事です? ロングアーチのスタッフも何だか脱力していましたし‥」
「これって、私への視線の事? たぶんさっきの念話のせいだね。ロングアーチのスタッフも‥まあ、うーんと大雑把に言えば‥やっぱり、念話が原因になるのかな」
 そう答えると、グリフィスは『さっきの念話の‥』まで聞いた瞬間に、土下座でもしかねない勢いで私に頭を下げた。
「すみませんっ! 部隊長が、例によって色々とご迷惑をお掛けしています」
「別にグリフィスのせいじゃないよ。それに、はやての奇行には、もういい加減慣れてるから‥十年来の付き合いだし」
 本当に慣れている訳じゃないけど、慣れる事なんて多分ないけど。こっちが慣れたと思ったら、はやては新しい悪ふざけを繰り出してくるから‥でも、グリフィスを責めても始まらないしね。

 グリフィスを慰めながら、はやてが寄越した箱のリボンを外して中を確認する。何か罠が隠されている可能性が否定できないし‥って、いちいち親友の行動を疑うのもなんだかなあ。
 まあ、こうして正々堂々とはやての行状を疑えるのも、その事がはやての耳に入る事を何一つ気にする必要がないのも、『親友だからこそ』と言えるのかもしれないけど‥。
 過去の例からいって、こうした状況下でのはやての贈り物は、十中八九は何か細工がしてあるから、疑われても文句は言えないはずだしね。

 今回は特に細工は無かった(と思う)。箱から出てきたのは、

■クレヴェニア(第十一管理世界の一地方。優れた畜産物と農産物で知られる)風料理で有名なレストランのクーポン(これは嬉しいかも‥本当にデートの予定があるのなら‥だけど)
■機動六課近隣のラブホテル一覧とフリー宿泊/ご休憩券(恋人たちが二人きりになる場所を探すのに苦労するのはどこの世界でも同じ。当然ミッドチルダでもそうした目的の施設はそれなりに需要があり、需要がある以上供給もある。‥まあ、これも本当にデートの予定があるのなら、ありがたいかもだ)
■砂竜エキス入り強精剤が半ダース!(絶対嘘だっ! シグナムやヴィータでさえ、倒すのにてこずった事がある砂竜が、そんなに商業ベースで狩れる訳が無い。‥でも、砂竜エキスが入っているかどうかはともかく、それなりに薬効はあるかもしれないから、これも本当にデートの予定があるのなら‥って! これを飲んで私にナニをしろとっ!?)

という、はやてなりに(恐らく)一所懸命に考えてくれたデート用アイテム一式のようだった。というか、はやて。最近、ますます発想が親父化してきているよ‥。

 苦笑いを浮かべる私を見て、グリフィスが更に恐縮する。
 ところが私の後ろから手元を覗き込んでいたアルト・クラエッタ(ロングアーチのスタッフだけど、何かの連絡で広域捜査班に赴いていた為、他のスタッフの様な事実誤認や脱力に陥らずに済んでいたらしい)が何を勘違いしたのか、大きな声で嬉しそうに言い放った。
「それ、部隊長からのプレゼントですかっ! フェイトさんのデートのお相手って‥まさか部隊長!?」
 まてこら! 幾らはやてだって、デートの相手に対して直前にこんなモノ送りつけたりはしないだろう!? ‥それともするのかな?
「なるほどっ! だからこそ、さっきの念話という展開に‥」
 グリフィス、そこで納得するなっ! さっきまでの、はやての悪ふざけに恐縮した様子は何だったんだっ!
「ええ。それなら部隊長の行動も納得できます。フェイトさんをからかうのが目的ならともかく、あの部隊長が自分の楽しみ以外であんな念話をする訳が‥」
 ‥さすがにロングアーチのコア・スタッフは冷静な視点ではやてを評価しているなあ‥って、いや、今回のはやての目的は『はやて自身の楽しみ』じゃなく、『私をからかう』方だからねっ! ま、それもはやての楽しみかもしれないけど‥。

 そこまで考えたら気がついた。はやてが贈ってくれたデートアイテム一式はやっぱり罠だったのだ。わざわざグリフィスに届けさせる事で、私がはやてからデートアイテムを贈られた事が様々な憶測を伴って、六課に広まる事を期待しているのに間違いない。
 ほら、既にグリフィスとアルトは私のデート相手の候補として、はやてを想定して盛り上がっているじゃないっ!

 それにしても‥こう次から次へと勝手にデートの相手を設定されると、もういちいち否定するのもバカバカしくなって、挙句の果てに、
『いっそはやてが、ついでにデートの相手もでっち上げておいてくれれば、こんなに疲れなくても済んだのに』
なんて、非建設的な考えが浮かんで来てしまう。
 せっかく蘇った気力をまたもや、削り取られたような気がして、結局、私はスタッフとの連絡事項の確認だけ済ますと、自室に戻って休む事にした。

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